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不動産を売ったときの税金 |
どんな税金がかかるか |
「住宅の取得は一生に一度の大仕事」とは一昔前の話。最近では、一度ところか二度三度と買い換え、よりグレードの高い住宅へ住み替えるという人が増えています。その時に問題となるのが、不動産を売ったときの税金です。
不動産は価額が高いですから、これを売ったときの税金も負担が大変です。しかし、特例制度もいろいろとありますので、その制度をうまく利用することをおすすめします。
さて、不動産を売ったときの税金ですが、誰がどの程度保有していた不動産を売ったかによって税金の種類や課税内容が違います。ここではその分類をしておきましょう。 |
●個人(サラリーマン等一般の人) が土地・建物を売った場合 |
⇒ |
譲渡所得に対する所得税及び住民税
長期保有のものの売却益にあっては軽課、短期保有のものの売却益にあっては重課されます。 |
●個人の不動産業者(会社組織でないもの)が商品である土地を売った場合 |
⇒ |
事業所得に対する所得税及び住民税
なお、短期保有土地の売却益にあっては、短期所有土地譲渡益重課制度が設けられていますが、10年から3年間、その重課の適用が停止され、通常の事業所得と同様に総合課税により課税されます。 |
●法人(有限会社、株式会社等で不動産会社に限らない)が土地を売った場合 |
⇒ |
法人税及び住民税
なお、長期保有土地の売却益にあっては一般重課制度が、短期保有土地の売却益にあっては、短期所有土地譲渡益重課制度がそれぞれ設けられていますが、10年から3年間、その特別課税による重課の適用が停止され、通常の法人税や住民税だけが課税されます。 |
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なおこれらの税金については、居住用財産を譲渡した場合や買い換えた場合、優良住宅地の造成のために土地を譲渡した場合など一定の場合には、特例が認められています。
以上の他にも、次のような税金が関係してきます。
・不動産を売るときには売買契約書を取り交わしますが、契約書には印紙を貼らなけれ ばなりませんので印紙税がかかります。
・抵当権の抹消登記をして不動産を売る場合には登録免許税(不動産1個に付き1,000 円)を納めなければなりません。
・不動産業者の仲介により不動産を売る場合の仲介手数料、登記を要するときの司法書 士に支払う登記手数料が消費税の課税対象となります。 |
個人が不動産を売ったときの税金の節税フロー表 |
売却する土地建物が |
1.居住用である |
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所有期間が5年以下 |
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3000万円の特別控除 |
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短期譲渡所得の税金 |
所有期間が5年超10年以下 |
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買い換えない |
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3000万円の特別控除 |
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長期譲渡所得の税金 |
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買い換える |
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譲渡益が出た |
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譲渡損が出た |
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居住用財産の買換えに係る譲渡損失の繰越控除の特例 |
所有期間が10年を超える |
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買い換える |
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相続により取得し、居住期間が30年以上のもの |
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相続等により取得した居住用財産の買換えの特例 |
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居住期間が10年以上等一定の要件を満たすもの |
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特定の居住用財産の買換えの特例 |
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上記に該当しないもの |
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譲渡損が出た |
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居住用財産の買換えに係る譲渡損失の繰越控除の特例 |
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譲渡益が出た |
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3000万円の特別控除→居住用財産の譲渡に係る軽減税率の特例 |
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買い換えない |
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2.事業用である |
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買い換える |
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特定事業用資産の買換えの特例 |
買い換えない |
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所有期間が5年を超える |
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長期譲渡所得の税金 |
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所有期間が5年以下 |
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短期譲渡所得の税金 |
3.特定の事業のために売却する |
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優良住宅地の造成等のために売却 |
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所有期間が5年以下 |
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所有期間が5年を超える |
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優良住宅地の造成等のために土地を売った場合の特例 |
特定土地区画整理事業のために売却 |
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2000万円の特別控除 |
特定住宅地造成事業のために売却 |
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1500万円の特別控除 |
中高層耐火共同住宅の建設のために売却 |
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中高層耐火建築物等(共同住宅)の建設のための買い換えの特例 |
特定民間再開発事業のために売却 |
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中高層耐火建築物等(特定民間再開発事業)の建設のための買い換えの特例 |
4.上記1〜3に該当しない |
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所有期間が5年以下 |
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短期譲渡所得の税金 |
所有期間が5年を超える |
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長期譲渡所得の税金 |
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土地や建物を売った場合の譲渡所得の税金計算のしくみ |
1.譲渡所得の計算のあらまし |
個人が、土地や建物を売却し、利益(譲渡益)が生じた場合には、その利益に対して、所得税と住民税がかかります。
この課税対象となる利益のことを、税法上「譲渡所得(金額)」と呼んでいます。
「土地建物等を売った場合の税金」は、まずこの「譲渡所得(金額)」を正確に計算することから始めます。そして売却した土地建物等の所有期間の区分(5年超か5年以下か)に応じた税額計算の方法によって、実際に納める税額を計算することになります。
以下、「譲渡所得(金額)」の計算方法と納税額の算出方法について、順を追って説明していきます。
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2.「課税譲渡所得金額」はどのように計算するのか? |
「譲渡所得金額」は、譲渡による収入金額(譲渡価額)から、その不動産を取得したときの価額や取得に要した費用(これらを取得費といいます)、および譲渡に要した費用(譲渡費用といいます)を差し引いて計算されます。この、「譲渡所得金額」から、さらに特別控除の適用がある場合にはその特別控除額を控除して求めたものが、税額計算の基礎とされる
「課税譲渡所得金額」といわれるものです。
取得費あるいは譲渡費用として差し引けるものについては、下記を参考にして下さい。 |
●課税譲渡所得金額の計算式 |
課税譲渡所得金額 |
= |
譲渡価額 |
− |
取得費 |
− |
譲渡費用 |
− |
特別控除 |
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取 得 費
売却した土地や建物の購入価額(建物は減価償却後)/購入の際の仲介手数料/購入の際に支払った立ち退き料・移転料/売買契約書に貼付した印紙税/登録免許税や登録手数料/不動産取得税/特別土地保有税(取得分)/搬入費や据付費/建物等の取壊し費用などがあります。購入時の契約書、領収書によって確認します。
実際の取得費が不明の場合は譲渡価額の5%となります。 |
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譲 渡 費 用
土地や建物を売却するために要した費用で、売却の際の仲介手数料/売却に伴う広告費や測量費/売買契約書に貼付した印紙税/売却に伴い支払う立ち退き料/建物等の取壊し費用などがあります。 |
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特 別 控 除
これは、国の政策的な配慮によって設けられているもので、長期譲渡所得について無条件で認められる100万円の特別控除のほかに、居住用財産を売った場合の3,000万円の特別控除、特定住宅地造成事業等のために土地を売った場合の1,500万円の特別控除などがあります。 |
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3.長期・短期の区分 |
前述の算式によって課税譲渡所得金額を求めたら、次に譲渡した土地建物等の所有期間の区分(5年超か5年以下か)に応じた税額計算の方法によって税額を計算することになります。
そこでまず、譲渡した土地建物等の所有期間を区分する必要があります。
具体的には、土地建物等の譲渡した年の1月1日において、所有期間が、5年を超える場合を長期譲渡所得、5年以下の場合を短期譲渡所得として区分されています。
譲渡した年の1月1日における所有期間が
・5年を超える場合‥‥長期譲渡所得
・5年以下の場合‥‥‥短期譲渡所得 |
なお、ここで注意して欲しいのは、所有期間5年というのは、その年や建物を購入した日から売った日までの期間で計算するのでありません。譲渡した日の属する年の1月1日現在で判定すると言うことです。平成12年中の譲渡ですと、平成12年1月1日において判定しますので、平成6年12月31日以前に取得したものが長期譲渡所得、平成7年1月1日以後に取得したものは短期譲渡所得ということになります。
《取得の日と譲渡の日》
上記によって、長期譲渡所得と短期譲渡所得とを区別するわけですが、そうした場合に、取得した日とか譲渡した日というのはどういった基準で判定するかが問題となってきます。 取得の日は、原則として、次の基準とされます。
イ.購入の場合→引渡の日(売買契約の効力発生の日によることもできます)
ロ.自己建設した場合→建設の完了の日
ハ.他に請負わせた場合→引渡の日
なお、贈与とか相続による取得は、みなし譲渡課税が行われているものを除いて、取得時期を引き継ぐ事とされています。
また、譲渡の日は、原則として、土地、建物等を買主に引き渡した日ですが、売買契約の効力発生の日によることもできます。
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4.長期譲渡所得の税金の計算 |
長期譲渡所得(所有期間5年超)にかかる税金は、平成11年分から平成15年分に限り、課税長期譲渡所得金額に、一律26%(所得税20%・住民税6%)の税率を乗じて計算されます。
課税長期譲渡所得金額×26%(所得税20%・住民税6%)
=所得税額および住民税額
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5.短期譲渡所得の税金の計算 |
短期譲渡所得(所有期間5年以下)にかかる税金は、次の@、Aのうち、いずれか高い方の額が税額とされます。
@ |
課税短期譲渡所得金額×40%(注1)=所得金額 |
A |
イ. |
(課税短期譲渡所得金額−50万円+課税総所得金額)×累進税率(注2) |
ロ. |
課税総所得金額×累進税率 |
ハ. |
(イ−ロ)×110%=所得税額 |
(注1)住民税額は、「40%」を、都道府県民税の場合は3%に、市区町村民税の場合は9%
に、それぞれ置き換えて計算します。
(注2)累進税率は、下表を適用して計算します。 |
〈所得税の速算表〉
課 税 所 得 金 額 |
税 率 |
控 除 額 |
330万円以下 |
10% |
− |
330万円超 900万円以下 |
20% |
33万円 |
900万円超 1,800万円以下 |
30% |
123万円 |
1,800万円超 |
37% |
249万円 |
〈住民税の速算表〉
1.都道府県民税
課 税 所 得 金 額 |
税 率 |
控 除 額 |
700万円以下 |
2% |
− |
700万円超 |
3% |
7万円 |
2.市区町村民税
課 税 所 得 金 額 |
税 率 |
控 除 額 |
200万円以下 |
3% |
− |
200万円超 700万円以下 |
8% |
10万円 |
700万円超 |
10% |
24万円 |
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6.便利な譲渡所得の税金の早見表 |
さて、ここまでの説明で譲渡所得の税金の計算方法がおわかり頂けたと思いますが、この方法で税額を計算するのは面倒だという方、または、正確な計算を必要としない場合、つまり、目安としておおよそこの位だということがわかれば良いというむきには、次の早見表のご利用をおすすめします。 |
〈長期譲渡所得に対する所得税額・住民税額の早見表〉 |
〈短期譲渡所得に対する所得税額・住民税額の早見表〉
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7.譲渡損失が生じたケース |
ここまではいずれも土地や住宅を売って利益(譲渡益)がでたときのお話ですが、必ずしも買ったときよりも高く売れるとは限りません。赤字(これを譲渡損出といいます)がでるケースもあるかと思います。こんなときはね確定申告をすることにより譲渡損失と給与所得等の他の所得とが通算(これを損益通算といいます)されて税金が戻ってくる場合があります。また、居住用財産を買い換えた際に売却した住宅などに損失が発生したときには、その譲渡損失について、3年間の繰越控除の適用を受けることができる場合か゜あります。
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8.譲渡所得の申告手続 |
@税務署への手続
譲渡所得がある場合には、翌年の3月15日までに所轄の税務署に申告し、税金を納めることになります。この場合の申告書は一般の場合と違い、「所得税の確定申告書(分離課税用)」というものを用います。土地や建物を譲渡すれば登記がつきものであり、変更登記などの資料によって、税務署は土地や建物を売った人がわかり、上記の申告用紙を送ってくることになっています。
そのほか、税務署へは課税譲渡所得を計算するための「譲渡のおたずね」、税額を計算するための「附表」を提出することになっています。
A市区町村役所への手続き
税務署へ申告した場合には値その申告内容がすべて市区町村役所へ回りますので、手続きは不要です。譲渡所得分の税金については、、譲渡した翌年の6月までに他の所得の税金とあわせて納税通知書が市区町村役所からきますので、確認の上、銀行または郵便局で納付することになります。
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特定の不動産を売った場合の軽減の特例措置 |
譲渡した土地建物等が自分の居住している住宅やその敷地である場合、優良住宅地の造成事業等のために土地等を譲渡した場合など特定の場合については、一般の譲渡にくらべて税金が軽減される特例が設けられています。
主な特例としては、次のものがあります。
○居住用財産を売ったときの特例
・居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除
・所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
・居住用財産の買換え特例
特定の居住用財産の買換え特例
相続等により取得した居住用財産の買換え特例
・居住用財産の買換えに係る譲渡損失の繰越控除の特例
○優良住宅地の造成等のために土地を売った場合の特例
○中高層耐火建築物等の建設のための買換えの特例
○特定事業用資産の買換えの特例
○特定住宅造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除
それでは、各特例について順を追って説明していきます。
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居住用財産を売った場合の特例 |
自分が居住している住宅やその敷地を売った場合には、3,000万円の特別控除が受けられます。また、その住宅や敷地の所有期間が10年を超える場合には、3,000万円の特別控除後の譲渡益に対して、6,000万円以下の部分は10%(ほかに住民税4%)、6,000を超える部分は15%(ほかに住民税5%)の各税率で他の所得とは関係なく分離して課税され、一般の譲渡にくらべて非常に軽減されます。
さらに、居住用財産を買い換えた場合には、「特定の居住用財産の買い換え特例」や「相続等により取得した居住用財産の買い換え特例」が受けられます。
なお、買換えの際に、売却した居住用財産に損失が出たときには、その譲渡損失について繰越控除の特例が受けられます。
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1.3,000万円の特別控除 |
1-@.特別控除が適用されるケース |
この特別控除は、次に掲げる居住用財産の譲渡をした場合に該当するときに3,000万円の特別控除が受けられるというものです。
また、長期保有、短期保有に関係なく、利用することができます。
@現に自分が住んでいる住宅やその住宅とともにその敷地を譲渡した場合
A以前に自分が住んでいた住宅や住宅とともにその敷地をその住宅に住まなくなった日から3年後の12月31日までの間に譲渡した場合(その家屋に住まなくなった後は、その家屋を何につかっていてもかまいません) |
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1-A.特別控除が適用されないケース |
@前年分または前々年分の譲渡所得について、すでにこの3,000万円の特別控除か居住 用財産の買い替えの特例(後述)の適用を受けている場合(つまり、この特別控除の適用 は3年に1回ということです)
Aその住宅や敷地の譲渡について、収用等の特別控除または買い換えなどの他の特例の適用を受ける場合(特例の重複適用はできないということです)
Bその住宅や敷地の譲渡先が、その人の配偶者や直系血族(親、子など)、生計を一にしている親族およびその居住用家屋の譲渡後に譲渡者とその居住用家屋に居住する親族など特殊な関係にあるものである場合
Cこの特例の適用を受けるためのみの目的で入居したと認められる場合
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1-B.特別控除を受けるための手続き |
この特例の適用を受けるためには、確定申告書に次に掲げる書類を添付して所轄の税務署に提出しなければなりません。この場合、その確定申告書の「二面」の「特例適用条文」の欄に「措法35条」と記入する必要があります。
添付書類は…
@前に住んでいた住所地の市区町村から交付される「除住民票」で譲渡した日から2ヶ月を 経過した後に交付を受けたもの。なお、前の住所地と新しい住所地が離れていて、前の住所の住民票をとるのがたいへんなときは、郵送で取り寄せることもできます。
A譲渡所得計算明細書
実際上は、これに代えて「譲渡のおたずね」という書類を添付します。
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2.所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例 |
2-@.特例が適用されるケース |
この制度は、個人が、その年の1月1日において所有期間が10年を超える次の居住用財産を譲渡した場合に適用されます。
@現に自分が住んでいる住宅
A以前に自分が住んでいた住宅で、自分が住まなくなったその日から3年後の12月31日ま でに譲渡したもの
B@やAの住宅及びその家屋とともに譲渡された敷地
C災害によって滅失した住宅の敷地で、その住宅が滅失しなかったならば、その年の1月1 日における所有期間が10年を超えている住宅の敷地。ただし、その災害があった日以 後3年を経過する日の属する12月31日までに譲渡したものに限ります。
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2-A.特例が適用されないケース |
@居住用財産の買い換えの特例を選択する場合
Aその居住用財産の譲渡先が、その人の配偶者とか、直系血族など特別の関係にある人 の場合
B収用等の場合の課税の特例、既成市街地等内における中高層耐火建築物の建設のた めの買い換えの特例、同種資産との交換の特例のような他の特例の適用を受ける場合
Cその年の前年または前々年において既にこの特例の適用を受けている場合
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2-B.特例の税金の計算 |
3,000万円特別控除後の譲渡益について、次の税率で課税されます。
●3,000万円特別控除後の譲渡益のうち6,000万円以下の部分………10%
(ほかに住民税4%)
●3,000万円特別控除後の譲渡益のうち6,000万円を超える部分……15%
(ほかに住民税5%) |
|
(譲渡益)
↓
<9,000万円
<3,000万円 |
3,000万円までの譲渡益については特別控除によって無税となり、3,000万円超9,000万円以下の譲渡益の部分は所得税10%、住民税4%で課税され、9,000万円超の譲渡益の部分は、所得税15%、住民税5%で課税されます。
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2-C.特例を受けるための手続き |
この特例の適用を受けるには、確定申告書に、この特例の適用を受けようとする旨の記載(特例適用条文欄に「措法第31条の3」と記入)があり、かつ、次の書類を添付して所轄の税務署に提出しなければなりません。
@譲渡した家屋や敷地の登記簿謄(抄)本
A前に住んでいた住所地の市区町村から交付される「除票住民票」で、譲渡した日から2ヶ月を経過した後に交付を受けたもの
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3.居住用財産の買換え特例 |
居住用財産の買換えについては、現在、@住替えによる居住水準の向上を支援する趣旨で設けられている「特定の居住用財産の買換えの特例」と、A二世代以上にわたって居住の用に供し、かつ、極めて長期にわたり生活の本拠としてきた居住用財産の売却に対する特別の配慮として設けられている「相続等により取得した居住用財産の買換えの特例」の2つの特例が認められています。
居住用財産の買換えというのは、今まで住んでいた住宅やその敷地を売って(譲渡資産といいます)、新たに居住用の住宅やその敷地を買う(買換え資産といいます)ことですが、この特例の中身というのは、取得価額の引継による課税の繰り延べといわれるものです。具体的には次のようになります。
@ 譲渡した資産の譲渡価額が買い換えた資産の取得価額を下回る(譲渡資産の売却代 金≦買換え資産の購入代金)場合には、その譲渡がなかったものとして税金はかかりま せん。
A 譲渡した資産の譲渡価額が買い換えた資産の取得価額を上回る(譲渡資産の売却代 金≧買換え資産の購入代金)場合には、売却代金のうち購入代金に充てた部分については譲渡がなかったものとして税金はかかりませんが、購入代金を上回る部分(売却代金が残った部分)についてだけは譲渡があったものとして課税されます。
そして、その売却代金が残ったことにより、課税されることとなる場合の課税譲渡所得金額は、次の算式により計算されます。
イ 譲渡資産の売却代金−買換え資産の購入代金=収入金額
ロ (譲渡資産の取得費+譲渡費用)×イの収入金額/譲渡資産の売却代金
=取得費および譲渡費用
ハ イ−ロ=課税長期譲渡所得金額
以上が居住用財産の買換えの特例のしくみですが、この特例の適用を受けるためには、一定の要件を満たしていなければなりません。以下では「特定の居住用財産の買換えの特例」と「相続等により取得した居住用財産の買換えの特例」とに分けて、その要件と必要な事項について説明していきます。
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4.特定の居住用財産の買換え特例 |
4-@.特例が適用されるケース |
この適用が受けられるのは、平成15年12月31日までの間に居住用の住宅やその敷地を売った場合で、譲渡資産(売った居住用の住宅やその敷地)および買換資産(購入した居住用の住宅やその敷地)が、次の要件に該当する場合です。
区分 |
要 件 の 内 容 |
譲
渡
資
産 |
@その譲渡した年の1月1日における所有期間が10年を超えていること
A現に自分が住んでいる住宅で、居住期間が10年以上であるもの
次に掲げるものも含まれます。
・以前に自分が住んでいたAの住宅で、自分が住まなくなった日から3年後 の12月31日までに譲渡されるもの
・上記の住宅及びその敷地
・災害によってAの住宅が滅失した場合において、その住宅を引き続き所有 していたとしたならば、その年の1月1日における所有期間が10年を超えるその住宅の敷地(その災害があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されるものに限ります。) |
買
換
資
産 |
@譲渡資産を譲渡した年の前年の1月1日から譲渡した年の12月31日までの間に居住用の住宅や敷地を取得すること
(注)上記については、税務署長の承認を受けて、譲渡した年の翌年12月31日 まで1年延長することができます。
A譲渡資産を譲渡した年の翌年12月31日までの間に、取得した住宅を居住の用に供すること、または供する見込みであること。
(注)@で税務署長の承認を受けている場合は譲渡資産を譲渡した年の翌々年の12月31日までに、取得した住宅を居住の用に供すること、または供する見込みであること)
B取得する住宅は、床面積が50u以上280u以下であること。
(注)地上3階以上の中古マンションについては、新築されてから25年以内のも のであること
C取得する敷地は、その面積が500u以下であること。 |
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4-A.特例が適用されないケース |
@3,000万円の特別控除を選択する場合
A所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例を選択する場合
B相続等により取得した居住用財産の買換えの特例の適用を受ける場合
C居住用財産の買換えに係る譲渡損失の繰越控除の特例の適用を受ける場合
Dその居住用財産の譲渡先がその人の配偶者とか、直系血族など特別の関係にある人 の場合
E収用等の場合の課税の特例、既成市街地等名井にける中高層耐火建築物等の建設のための買換えの特例、同種資産との交換の特例のような他の特例の適用を受ける場合
目次へ戻る |
4-B.特例を受けるための手続き |
この特例の適用を受けるには、確定申告書に、この特例の適用を受けようとする旨の記載(特例適用条文欄に「措法36条の6」と記入)があり、かつ、次に掲げる書類を添付して所轄の税務署に提出しなければなりません。
添付書類としては、次のものが必要です。
@譲渡所得計算書(譲渡のおたずね)
A登記簿謄本及び売買契約書(ともに、売った方と買った方の両方の資産のもの)
B住民票の写し(前の住所地のものと、新しい住所地のものの両方)
なお、前の住所地の住民票は、3,000万円の特別控除の場合と同様に、その居住用財産 を売った日から2ヶ月を経過した後に交付された除票住民票の写しです。
C買換え資産を取得する見込みの時は、税務署長の承認を受けて見積額で計算すること になります。この場合には、「買換え承認申請書」を添付しなければなりません。
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5.相続等により取得した居住用財産の買換え特例 |
5-@.特例が適用されるケース |
この特例が受けられるのは、居住用の住宅やその敷地を売った場合で、譲渡資産及び買換え資産が次の要件に該当する場合です。
区分 |
要 件 の 内 容 |
譲
渡
資
産 |
次に掲げる居住用財産で、その譲渡した年の1月1日における所有期間が10年を超えるもの(父母または祖父母が住んでいた住宅やその敷地で、相続または遺贈によって取得したものに限ります。)
@現に自分が住んでいる住宅で、居住期間が30年以上であるもの
A以前に自分が住んでいた@の住宅で、自分が住まなくなった日から3年後 の12月31日までに譲渡されるもの
B@やAの住宅とともに譲渡される敷地
C災害によって滅失した@の住宅の敷地でその住宅が滅失しなかったならば、 その年の1月1日における所有期間が10年を超えている住宅の敷地(その災害 があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されるも のに限ります。)
(注)相続により取得した住宅を譲渡者が建替えた場合には、建替え後の所有 期間が10年を超えていなければこの買換えの特例は適用されません。 |
買
換
資
産 |
@譲渡資産を譲渡した年の前年、その年、その年の翌年の3年間のうちに自分が住むための住宅やその敷地を取得すること
A譲渡資産を譲渡した年の翌年(譲渡した年の翌年に住宅やその敷地を取得した場合には、その譲渡した年の翌々年)の12月31日までに取得した住宅を居住の用に供すること、または供する見込みであること。 |
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5-A.特例が適用されないケース |
@3,000万円の特別控除を選択する場合
A所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例を選択する場合
B特定の居住用財産の買換えの特例の適用を受ける場合
C居住用財産の買換えに係る譲渡損失の繰越控除の特例の適用を受ける場合
Dその居住用財産の譲渡先がその人の配偶者とか、直系血族など特別の関係にある人 の場合
E収用等の場合の課税の特例、既成市街地等名井にける中高層耐火建築物等の建設のた めの買換えの特例、同種資産との交換の特例のような他の特例の適用を受ける場合
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5-B.特例を受けるための手続き |
この特例の適用を受けるには、確定申告書に、この特例の適用を受けようとする旨の記載(特例適用条文欄に「措法36条の2」と記入)があり、かつ、次に掲げる書類を添付して所轄の税務署に提出しなければなりません。
添付書類としては、次のものが必要です。
@譲渡所得計算書(譲渡のおたずね)
A登記簿謄本及び売買契約書(ともに、売った方と買った方の両方の資産のもの)
B住民票の写し(前の住所地のものと、新しい住所地のものの両方)
なお、前の住所地の住民票は、3,000万円の特別控除の場合と同様に、その居住用財産 を売った日から2ヶ月を経過した後に交付された除票住民票の写しです。
C買換え資産を取得する見込みの時は、税務署長の承認を受けて見積額で計算すること になります。この場合には、「買換え承認申請書」を添付しなければなりません。
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6.居住用財産の買換えにかかる譲渡損失の繰越控除の特例 |
6-@.特例が適用されるケース |
個人が、土地・建物等を譲渡して損失が発生した場合には、損失分が他の所得(給与所得等)から控除され、税金が戻ってくることがあります。
その特例として、個人が自己の居住用財産を買い換えた場合において、その譲渡資産について損失ができたとき(譲渡した年において、給与所得や事業所得等の他の所得と損益通算をしても控除しきれなかった損失があるとき)は、次のすべての要件を満たす場合に限って、その譲渡した年の翌年から3年間にわたって譲渡損失の金額が総所得金額等から繰越控除されます。なお、この繰越控除は、住宅ローン控除との併用が認められています。
区分 |
要 件 の 内 容 |
譲
渡
資
産 |
@平成15年12月31日までの間に譲渡される自己の居住の用に供する家屋またはその敷地で、その譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもののうち、次の(a)から(d)のいずれかに該当するものであること。
(a) 現に自分が住んでいる住宅
(b) 以前に自分が住んでいた住宅で、自分が住まなくなった日から3年後の12 月31日までの間に譲渡されるもの
(c) (a)や(b)の住宅およびその家屋とともに譲渡される敷地
(d) 災害によって滅失した住宅の敷地で、その住宅が滅失しなかったならば、そ の年1月1日における所有期間が5年を超えている住宅の敷地
ただし、その災害があった日以後3年を経過する日の12月31日までに譲渡さ れるものに限ります。
A譲渡をした日(原則として売買契約締結日)の前日において、譲渡資産に係る住 宅借入金等(返済期間10年以上のローン契約等によるもの)の金額を有している こと。 |
買
換
資
産 |
@平成10年1月1日から譲渡資産の譲渡をした年の翌年12月31日までの間に取得される自己の居住の用に供する家屋またはその敷地。
Aその家屋の居住部分の床面積が50u以上であること。
Bその取得の日から取得した年の翌年の12月31日までの間に自己の居住の用に 供すること、または供する見込みであること。
C繰越控除を受けようとする年の12月31日において、買換え資産に係る住宅借入金等(返済期間10年以上のローン契約等によるもの)の金額を有していること。 |
(参考)この繰越控除の特例は、これまで所得税のみで認められていましたが、居住用財産の譲渡が平成11年1月1日以降に行われる場合については、住民税においても、同様の措置が講じられ、その譲渡損失の金額がその譲渡した年の翌々年度以降3年度分にわたり総所得金額等から繰越控除されることとなりました。
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6-A.繰越控除が適用されないケース |
@一つの買換え資産に対して複数の譲渡資産がある場合(譲渡年が異なる場合を含む)には、その重複適用は認められず、いずれか一方の譲渡資産にしかこの繰越控除の適用は受けられません。
Aその年分の合計所得金額が3,000万円を超える年(各年ごとに判定します)
B譲渡資産の譲渡をした年の前年または前々年における資産の譲渡について、居住用財 産に係る次の特例の適用を受けている場合
(a)3,000万円控除
(b)所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合も軽減税率の特例
(c)特定の居住用財産の買換え特例
(d)相続等により取得した居住用財産の買換え特例
C譲渡資産をその人の配偶者とか、直系血族など特別の関係にある人に譲渡する場合
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6-B.譲渡損失の金額の計算 |
この特例が適用される譲渡資産にかかる譲渡損失の金額とは、譲渡資産にかかる譲渡所得の計算上生じたその年の損失額のうち、給与所得や事業所得の他の所得と損益通算をしてもなお控除しきれない部分の損失とされています。
なお、譲渡資産のうちに、その面積が500uを超える家屋の敷地が含まれている場合にはその敷地にかかる損失額のうち500uを超える部分に相当する損失は除かれます。
(繰越控除の対象外)
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6-C.繰越控除を受けるための手続き |
この特例の適用を受けるには、確定申告書に、その居住用財産の譲渡損失の金額の計算に関する、明細書その他所定の書類を添付して所轄税務署に提出し、その後の年においても連続して確定申告書(繰越控除を受ける金額の計算に関する明細書の添付がされたもの)を提出しなければなりません。なお、添付する所定の書類については、所轄税務署におたずね下さい。
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優良住宅地の造成等のために土地を売った場合の特例 |
個人が平成15年12月31日までの間に所有期間5年超の土地等を譲渡した場合において、その譲渡が次に掲げる優良住宅地の造成等のための譲渡のいずれかに該当するときにはその税率が軽減され、後述の仕組みで課税されます。
なお、この特例は、土地等の譲渡についてのみ適用されるもので、建物の譲渡は対象となりません。
〈優良住宅地の造成等のための譲渡の範囲〉
@国または地方公共団体等に対する土地等の譲渡
A住宅・都市整備公団等の行う住宅建設または宅地造成の用に供するための土地等の譲 渡
B収用交換等による土地等の譲渡
C第一種市街地再開発事業の用に供するための土地等の譲渡
D特定の優良な建築物を建築する事業の用に供するための土地等の譲渡で、次の要件を 満たすもの
イ.その建築物の建築が、市街化区域内及び未線引都市計画区域内で用途地域が定め られている区域内において行われるものであること
ロ.建築工事の施工地区面積が150u以上であること
ハ.建築される建築物の面積が150u以上であること(建築物の用途は問われません)
ニ.上記イ〜ハに加え、さらに次のうちいずれかひとつの要件を満たすこと
・(1−建ぺい率)+1/10以上の空地が確保されていること(つまり、通常より10% 増の空地の確保が必要だということです)
・2以上の土地所有者等の敷地統合であること
・都市計画施設用地等(都市計画決定された公園・道路など)が確保されていること
E特定の民間再開発事業(地上階数4以上の中高層耐火建築物の建築をすることを目的 とする事業で、その事業が既成市街地等・高度利用地区・再開発地区計画などの区域内 で施行されることおよび施行地区の面積が、所定の規模以上であること等一定の要件を 満たすもの)の用に供するための土地等の譲渡
F都市計画区域内における一団の宅地造成事業の用に供するための土地等の譲渡で、 次の要件を満たすもの
イ.開発許可または土地区画整理事業の認可を受けた事業であること
ロ.施行地区面積が
・市街化区域内の場合 1,000u以上
・未線引都市計画区域内の場合 3,000u以上
・市街化調整区域内の場合
5ヘクタール以上 であること
ハ.都市計画施設または公共施設用地の比率が30%以上であること
G大都市地域における優良宅地開発の促進に関する緊急措置法の宅地開発事業計画の 優良認定および都市計画法の開発許可を受けて行われる複合的宅地開発事業の用に 供するための土地等の譲渡
H都市計画法の開発許可を受けて行う一団の住宅地造成事業の用に供するための土地 等の譲渡
I都市計画法の開発許可を要しない一団の住宅地造成事業の用に供するための土地等 の譲渡で、次の要件を満たすもの
イ.その事業が都市計画区域内において行われるものであること
ロ.その一団の宅地の面積が1,000u以上(三大都市圏の特定市町村の区域内にあって は、500u以上)であること
ハ.その一団の造成が、優良な宅地の供給に寄与するものであることについて都道府県 知事の認定(優良宅地認定)を受けており、その認定の内容に従って行われること
J都市計画区域内において行う一団の住宅または中高層耐火共同住宅の建設の用に供 するための土地等の譲渡で、次の要件を満たすもの
イ.その事業が都市計画区域内において行われるものであること
ロ.一団の住宅の建設については、その住宅戸数が25戸以上であること
ハ.中高層耐火共同住宅の建設については、住居の用に供される独立部分が15戸以上 または住居部分の総延床面積が1,000u以上であり、かつ、住居の用に供される独立部 分の50u以上200u以下であること等の要件を満たしていること
ニ.その一団の住宅または中高層耐火共同住宅の建設が優良な住宅の供給に寄与するも のであることにつき都道府県知事または市町村長の認定を受けたものであること
K土地区画整理事業の施行区域内の土地を仮換地指定後3年以内に住宅地として譲渡す る場合で、一定の要件を満たす土地等の譲渡
〈税金の計算〉
この特例による税金は、課税長期譲渡所得金額に応じて次の軽減税率で計算されます。
●課税長期譲渡所得金額4,000万円までの部分……20%(うち住民税5%)
●課税長期譲渡所得金額4,000万円超の部分………26%(うち住民税6%) |
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中高層耐火建築物等の建設のための買換えの特例 |
中高層耐火共同住宅の建設のための買換え特例 |
個人が、その所有する首都圏、近畿圏、中部圏の特定の既成市街地等や近郊整備地帯等またはこれに準ずる区域(特定の市の市街化区域を含みます)として定められた地区内にある土地等や建物等を譲渡し、原則としてその譲渡した年の12月31日までに、その譲渡した土地等または建物等の敷地の上に建築された地上階数3以上の主として住宅用の中高層の耐火共同住宅の全部または一部を取得して、その取得の日から1年以内に事業の用もしくは居住の用に供した場合または供する見込みである場合には、取得価額の引継による買い換え特例が適用されます。
具体的には、譲渡した資産の譲渡価額が買換資産の取得価額以下であれば課税されません。また、譲渡価額が取得価額を超える場合には、その超える部分の金額が課税されることになります。
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特定民間再開発事業の促進に係る買換えの特例 |
個人が、その有する既成市街地等・高度利用地区・再開発地区計画などの区域内にある土地等、建物等を譲渡し、原則として、譲渡の年または譲渡の年の翌年までに、その譲渡をした土地等または建物等の敷地の用に供されている土地等の上に、一定の要件に該当する再開発事業として建築される地上階数4以上の中高層耐火建築物の全部または一部を取得して、その取得の日から1年以内に事業の用または居住の用に供した場合には、上記の中高層耐火共同住宅の建設のための買換え特例と同様の特例が認められます。
また、譲渡した土地等の上に建築される中高層耐火建築物でなくとも、同じ地区内に建築される他の中高層耐火建築物を取得したときにも特例が適用されます。
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特定事業用資産の買い換えの特例 |
特例が適用されるケース |
この特例は、個人が平成18年12月31日まで(次表のDにあっては平成10年1月1日から平成15年12月31日まで)の間に、次の表の左の欄に示す事業用の土地や建物を譲渡して、原則として、譲渡した年、またはその前年、もしくは翌年に右の欄の事業用資産を取得し、取得の日から1年以内に事業の用に供した場合または供する見込みである場合に適用されます。
〈特定事業用資産の買換えの主な組み合わせ例〉
譲 渡 資 産 |
買 換 資 産 |
@既成市街地等にある事務所、事業所等として使用されている建物(貸付の用に供されているものを含む)またはその敷地の用に供されている土地等で平成3年3月31日以前に取得された資産(平成14年1月1日以後の譲渡では所有期間10年超のもの) |
既成市街地等以外の地域内(国内に限られるにある)土地等 建物等 |
A誘致区域(首都圏の近郊整備地帯内や都市開発区域内の計画工業団地等、及びこれに類する一定の区域)外の土地等 建物等 |
A誘致区域にある土地等 建物等 |
B既成市街地等にある土地等 建物等 |
既成市街地等にある土地等 建物等で土地の計画的かつ効率的な利用に資するものとして所定の施策の実施に伴い、その施策に従って取得されるもの |
C市街化区域または既成市街地等の地域 内にある土地等、建物等で、その土地等、 建物等の敷地の用に供されている土地等 の上に建築面積が150u以上で、かつ、地 上階数が4(特定の共同住宅にあっては3) 以上の建物(「特定建物」という)を建築す るために譲渡されるもの |
市街化区域または既成市街地等の地域内にある特定建物、その特定建物の敷地の用に供されている土地等 |
D所有期間が10年を超える土地等、建物等 |
国内にある土地等、建物等 |
(注)買換資産の中に土地等があり、買換えによって取得した土地等の面積が、譲渡した土地の面積の原則として5倍を超える場合には、その超える部分の面積に対応する買換え土地等の部分は、買換資産に該当しないこととされます。
なお、その年の1月1日におあて所有期間が5年以下である土地等の譲渡については、原則としてこの特例は適用しないこととされていますが、その土地等の譲渡が平成10年1月1日から平成12年12月31日までの間に行われたものにあっては、臨時的にこの特例の適用を受けることができることとされています。
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特例の税金の計算 |
この特例では、他の買換えの特例と異なり、譲渡した資産の譲渡価額と買換資産の取得価額の大小に関係なく、必ず課税が生じます。
課税譲渡所得金額の具体的な計算は、原則として次のようになります。
@譲渡した資産の譲渡価額が買換資産の取得価額以下である場合
イ.譲渡した資産の譲渡価額×20%=課税される収入金額
ロ.(譲渡した資産の取得費+譲渡費用)×20%=課税される収入金額に対応する取得費と 譲渡費用
ハ.イ−ロ=課税譲渡所得金額
A譲渡した資産の譲渡価額が買換資産の取得価額を超える場合
イ.譲渡した資産の譲渡価額−買換資産の取得価額×80%=課税される収入金額
ロ.(譲渡した資産の取得費+譲渡費用)×上記イの収入金額/譲渡した資産の譲 渡価額=課税される収入金額に対応する取得費と譲渡費用
ハ.イ−ロ=課税譲渡所得金額
この買換特例の適用を受けるためには、確定申告書の「二面」の「特例適用条文」欄に「措法37条」と記入し、その申告書に「譲渡所得計算明細書」を添付して税務署に提出しなければなりません。
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その他の特例 |
どんな特例があるか |
土地や建物を譲渡した場合、すでに説明した特例のほかに次のものがあります。
@国や地方公共団体などから収用された場合の5,000万円特別控除または買換えの特例
A土地や建物を同じ種類の資産と交換した場合の特例
この特例は、土地と土地とか建物と建物というように同一種類の資産(所有期間が1年以上のもの)を交換し、譲渡直前の用途と同一用途に供する場合には、譲渡がなかったも のとされて課税が繰延べられるものです。
この場合、交換資産相互の価額の差額(交換差金)が、いずれか高い方の価額の20%以下でなければ、この特例の適用を受けることができません。
Bその他にも、次のような譲渡所得の特別控除があります。
●特定土地区画整理事業等の場合 2,000万円
●特定住宅地造成事業等の場合 1,500万円
●農地保有の合理化等の場合 800万円
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法人が土地を売った場合の課税の特例 |
法人が土地を売った場合には、通常の法人税のほかに追加課税する特例があります。これらの特例は、投機的な土地取引を抑制しようという目的で設けられていたものですが、バブル経済崩壊後の長期にわたる地価の下落、土地取引などの土地を巡る状況等にかんがみて、土地の有効利用の促進や土地取引の活性化を図る見地から、平成10年度の税制改正において、時限的な適用の停止あるいは、適用期限を待たずに廃止するといった臨時緊急的な措置が講じられています。説明の必要はあまりないのかも知れませんが、一応簡単にふれておきます。 |
土地譲渡益の一般重課 |
法人が、その年の1月1日において5年超の土地等を売った場合には、その土地等の譲渡益に対して通常の法人税に加え、5%の特別税率で追加課税がされます。
⇒ 平成10年1月1日から平成15年12月31日までの間適用しない
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短期所有土地譲渡益重課 |
法人が、その年の1月1日において5年以下の土地等を売った場合には、その土地等の譲渡益に対して通常の法人税に加え、10%の特別税率で追加課税がされます。
⇒ 法人が、その年の1月1日において5年超の土地等を売った場合には、その土地等の譲渡益に対して通常の法人税に加え、5%の特別税率で追加課税がされます。
⇒ 平成10年1月1日からから 法人が、その年の1月1日において5年超の土地等を売った場合には、その土地等の譲渡益に対して通常の法人税に加え、5%の特別税率で追加課税がされます。
⇒ 平成10年1月1日から平成15年12月31日までの間適用しない
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超短期所有土地譲渡益重課 |
法人が、所有期間2年以下の土地等を売った場合には、その土地等の譲渡益に対して通常の法人税に加え15%の特別税率で追加課税をする特例(超短期所有土地譲渡益重課)
については、適用期限を待たずに、平成9年12月31日をもって廃止されています
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個人の不動産業者がが土地を売った場合の課税の特例 |
個人の不動産業者が商品としての土地等を売った場合には、事業所得として所得税が課税されます。このうち、所有期間5年以下の土地等を売った場合には、通常より税負担が重くなる特例措置が設けられていますが、これらの特例についても、法人のところで述べたと同様の趣旨で、時限的な適用の停止あるいは適用期限を待たずに廃止するといった臨時緊急的な措置が講じられています。 |
短期所有土地譲渡益重課 |
個人の不動産業者がその年の1月1日において所有期間5年以下の土地等を売った場合には、他の所得と分離して、次の@Aのうち、いずれか高い方の金額により所得税が課されます。
@土地等の譲渡に係る事業所得の金額の40%(住民税の場合は
12%)
A土地等の譲渡に係る事業所得の金額につき総合課税を行った場合の上積税額の
110 % ⇒ 平成10年1月1日から平成15年12月31日までの間適用しない
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超短期所有土地譲渡益重課 |
個人の不動産業者が、所有期間2年以下の土地等を売った場合の超短期所有土地譲渡益重課の特例については、法人の場合と同様に、適用期限を待たずに、平成9年12月31日をもって廃止されています。
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